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概要

igakukai

?PETを利用した最適がん治療戦略とは?京都府立医科大学放射線医学教室特任教授玉木長良がん分子標的療法など高価な治療薬が登場する一方で、医療費の高騰が深刻な問題となっている。がん治療には、個々の病態を的確に捉えて、それに応じた最適な治療が求められる。F-18標識デオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン断層撮影(PET)検査は、インビボでがんの糖代謝活性を映像化し、その病態評価を行うことができる。特に全身検索からその広がりを把握できるだけでなく、FDGの集積度から病変の活動性を客観的、定量的に解析できる利点がある。肺がんなどではその病期分類を的確に行うことで、外科的治療の適用の有無を決めることができる。実際に思いがけない病巣の広がりを捉えて、外科的治療から化学療法に治療方針が変更されることが多い。また、がんの放射線治療の際にも、PETでその活動性の範囲を捉えて、的確な照射部位を定めることも可能である。さらには治療後早期の活動性の変化から、形態的な変化をきたす以前の早期に治療効果判定ができる。またPETによるがんの反応性は予後指標として役立つとの報告も多い。悪性リンパ腫では、PETを用いた化学療法中のPET検査(Interim PET)より、早期に治療効果判定を行い、治療の増減あるいは治療の変更など、治療方針転換など予後を改善するための最適な治療の選択に利用されている。がんの病態をインビボで的確に捉えることのできるPET検査は、個々の病態に即した個別化医療を進めることができ、がんの治療戦略を進める上で大切な検査法と考えられ、今後利用が広がることが予想される。玉木長良先生ご略歴1978年3月京都大学医学部卒業1978年4月神戸中央市民病院内科研修1984年3月京都大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)1984年11月米国ハーバード大学医学部研究員1986年10月京都大学医学部核医学科助手1991年7月京都大学医学部核医学科講師1995年9月北海道大学医学部核医学講座教授2003年10月北海道大学アイソトープ総合センター長2007年4月北海道大学病院副病院長、医療安全管理部長2011年4月北海道大学医学研究科長、医学部長2016年4月北海道大学名誉教授2017年4月京都府立医科大学大学院医学研究科特任教授―10―